2023 · 03 · 31 (Fri) 15:53 ✎
□『ミセス・ハリス、パリへ行く』"Mrs. Harris Goes To Paris" 2022(Blu-ray)
1957年、ロンドン。戦争で夫を亡くした家政婦ミセス・ハリスは、得意先で見たディオールのドレスに魅せられる。その値段に驚いたミセス・ハリスだったが、パリへ行ってディオールのドレスを手に入れることを決意する。(監督:アンソニー・ファビアン 出演:レスリー・マンヴィル、イザベル・ユペール、ジェイソン・アイザックス、ランベール・ウィルソン、アルバ・バチスタ、リュカ・ブラヴォー、ローズ・ウィリアムズ、他)

1957年、ロンドン。戦争で夫を亡くした家政婦ミセス・ハリスは、得意先で見たディオールのドレスに魅せられる。その値段に驚いたミセス・ハリスだったが、パリへ行ってディオールのドレスを手に入れることを決意する。(監督:アンソニー・ファビアン 出演:レスリー・マンヴィル、イザベル・ユペール、ジェイソン・アイザックス、ランベール・ウィルソン、アルバ・バチスタ、リュカ・ブラヴォー、ローズ・ウィリアムズ、他)
原作を読み直す前に映画が公開されて、「見たいなー」と思いながらも気力と時間など諸々足りず……。結局、Blu-rayを買ってしまいました。
ストーリーはほぼ原作どおりです。細かいところがいろいろと変えてあるというか、再構成みたいになっていた。要素を使いながらも解釈や順番などを変えたり、キャラを現代的にアップデートしていた(特に女性たち)。元々あまり長い小説ではないけど、原作ファンにも違和感のない巧みな脚本だった。
一番大きな変化はラストだと思うんだけど、私としてはシャサニュ侯爵のところがね。ハリスおばさんのシリーズ原作はこれ以降もありますが、映画はこれで終わりということだな。あと、原作だと彼女の毅然とした気質は最初からのものなんだけど、この作品では成長の証として出てくる。
でも、この映画と原作に描かれていることは、確かに今の時代にも、というより、今の時代にこそ刺さるものなのよね。好きなものを好きと言っていい、ほしいものが自分に似合わないとかふさわしくないとか関係ない、人の目なんか気にしない、自分の力で手に入れることに誇りを持っていい──くやしいことに、こういうことは自分で自分に言い聞かせないとついつい忘れてしまう。今の時代でさえも、です。1957年はもっと言われたはず。だから、原作のハリスおばさんは、誰に何を言われても揺るがなかったんだな。
この映画でのミセス・ハリスは、今の時代にもいる、少し気後れしがちな人みたいな感じに描かれている。そういう気持ちって、どんな年齢でもどんな環境でも、ぶつかるものによってもすぐに頭をもたげてくる。それを振り払って、ミセス・ハリスはパリへ行くのです。おそらく彼女と同年代でなくても、その衝動や情熱には、誰でも感情移入できると思う。
原作の感想の記事に書きましたが、原作のハリスおばさんは私と同年代なのです。演じているレスリー・マンヴィルっていくつなんだろう、と調べたら、今年67歳だった。現在の50代後半くらいの人だと若すぎて見えてしまうかもしれない。昔と比べると、人の見た目は10歳くらい違うと聞いたことがある(ソースなし)。関係ないけど、見ている間ずっと「宮本信子に似てるなあ」(顔というより表情。「こういう演技しそう」みたいな)と思っていた(´ω`;)。うちの家族は「マイケル・ケインに似てる」って言ってたけど。
ところで、1957年のパリは、労働者のストで道路にゴミがあふれていた(今のパリも年金改革反対ストのためにそのようですが)。それをそのまま描いているのもいい。ディオールで夢のようなドレスを無造作に買える人たちが、誰から搾取しているのかがひと目でわかる。
そういう苦い部分をうまく物語に入れ込みながらも、ラストの後味はとても優しい。原作読んでラスト気に入らなかった人も大丈夫です。そういう人にこそすすめたい。
あっ、それから「全財産を持ってどこそこへ行く」みたいな話として思い出したのは、『オースティンランド 恋するテーマパーク』。これもおすすめです。それくらい入れ込んじゃう人の話にハズレなし?
(★★★★)
ストーリーはほぼ原作どおりです。細かいところがいろいろと変えてあるというか、再構成みたいになっていた。要素を使いながらも解釈や順番などを変えたり、キャラを現代的にアップデートしていた(特に女性たち)。元々あまり長い小説ではないけど、原作ファンにも違和感のない巧みな脚本だった。
一番大きな変化はラストだと思うんだけど、私としてはシャサニュ侯爵のところがね。ハリスおばさんのシリーズ原作はこれ以降もありますが、映画はこれで終わりということだな。あと、原作だと彼女の毅然とした気質は最初からのものなんだけど、この作品では成長の証として出てくる。
でも、この映画と原作に描かれていることは、確かに今の時代にも、というより、今の時代にこそ刺さるものなのよね。好きなものを好きと言っていい、ほしいものが自分に似合わないとかふさわしくないとか関係ない、人の目なんか気にしない、自分の力で手に入れることに誇りを持っていい──くやしいことに、こういうことは自分で自分に言い聞かせないとついつい忘れてしまう。今の時代でさえも、です。1957年はもっと言われたはず。だから、原作のハリスおばさんは、誰に何を言われても揺るがなかったんだな。
この映画でのミセス・ハリスは、今の時代にもいる、少し気後れしがちな人みたいな感じに描かれている。そういう気持ちって、どんな年齢でもどんな環境でも、ぶつかるものによってもすぐに頭をもたげてくる。それを振り払って、ミセス・ハリスはパリへ行くのです。おそらく彼女と同年代でなくても、その衝動や情熱には、誰でも感情移入できると思う。
原作の感想の記事に書きましたが、原作のハリスおばさんは私と同年代なのです。演じているレスリー・マンヴィルっていくつなんだろう、と調べたら、今年67歳だった。現在の50代後半くらいの人だと若すぎて見えてしまうかもしれない。昔と比べると、人の見た目は10歳くらい違うと聞いたことがある(ソースなし)。関係ないけど、見ている間ずっと「宮本信子に似てるなあ」(顔というより表情。「こういう演技しそう」みたいな)と思っていた(´ω`;)。うちの家族は「マイケル・ケインに似てる」って言ってたけど。
ところで、1957年のパリは、労働者のストで道路にゴミがあふれていた(今のパリも年金改革反対ストのためにそのようですが)。それをそのまま描いているのもいい。ディオールで夢のようなドレスを無造作に買える人たちが、誰から搾取しているのかがひと目でわかる。
そういう苦い部分をうまく物語に入れ込みながらも、ラストの後味はとても優しい。原作読んでラスト気に入らなかった人も大丈夫です。そういう人にこそすすめたい。
あっ、それから「全財産を持ってどこそこへ行く」みたいな話として思い出したのは、『オースティンランド 恋するテーマパーク』。これもおすすめです。それくらい入れ込んじゃう人の話にハズレなし?
(★★★★)
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最終更新日 : 2023-04-01