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2023 · 05 · 27 (Sat) 15:04

●『あなたという仮面の下は』エリザベス・ホイト(再掲)

●『あなたという仮面の下は』エリザベス・ホイト(ライムブックス)
 未亡人のアンナは、亡き夫の母とつつましく暮らしていたが、生活のために働くことを決意し、スウォーティンガム伯爵エドワードの秘書になる。二人は惹かれあうが、身分差などが邪魔をしてお互いの気持ちを隠すしかない。そこでアンナは、ある奇策に出る。("The Raven Prince" by Elizabeth Hoyt,2006)
・〈プリンス三部作〉第1作



 ちょっと仕事が忙しくて更新できませんでした。少し落ち着いたので、またがんばります。

 初掲載は2009年4月20日
 感想にも書いてある「ヒロインのひとこと」のシーンは、今思い出しても良いです。ロマンス定番の切なさというより、ある程度歳を重ねた女性のやるせなさみたいなものもあって──味わい深い。

 あらすじがひどく簡素に見える……。まあ、このとおりなんですが、話をコンパクトにまとめようと思っても盛りだくさんなのがわかるね。
 面白かったです。天然痘で家族をすべて亡くし、自らもその痕(いわゆるこれが“あばた”だよね)のコンプレックスに悩むヒーロー。もう一度家族を持ちたいという気持ちがとても強く、前の結婚生活で妊娠しなかったヒロインを拒んだりもします。これは切なかったけど、ヒロインもそのことで夫に裏切られて傷つき、結婚することを恐れている。
 ここら辺の葛藤は、ちょっといろんな要素を絡めすぎではないか、とは思った。上記のものやヒーローとヒロインがこだわる“紳士と淑女”というもの、身分差──いや、いいんですけど、少し焦点がぼやけてたような……。まあ、それでもうよくわからなくなったヒロインがヤケクソになってああなった、とも言える……のか?
 ただ、そのことでできた二人の溝が、あっさりと解消するのは、ヒロインが自分の気持ちを正直に打ち明けた時で──私はこのシーンがとても好きだ。ヒロイン視点でしか書かれていないけど、ヒーローがものすごく喜んでいるというのが、とても自然に感じられた。まさに、
「百の罪も一輪の薔薇で許せるのよ」(by 中森明菜)
 状態。さっきまであんなに怒ってたはずなのに、たったひとことで覆る、というのは、恋愛では珍しいことじゃないし、醍醐味でもある。それを悟ったのがヒーローだというのが、妙に楽しかったです。彼の悲嘆はそれこそ大泣きするほどのものだったので、リバウンドも相当なもの。これ以降、ヒーローは大っぴらにデレデレメロメロになりますが、ヒロインはヒーローがずっと怒ってる、決して許してくれない、絶対自分は捨てられると思ってる、という大ツボな展開に。
 このシーンからあとは、かなりの頻度で読み返しています。
 脇役もとてもいいです。ヒーローの家令や近侍のとぼけた感じ、ヒロインの義母のいい人っぷり、ヒロインが助ける娼婦姉妹の強かさ。悪役がマヌケなのもよかったです。この程度で出張ってこられても困るからね。そしてブサイク犬のジョック。この子は役に立ってるのか立ってないのか(´∀`;)。
 各章の頭に挿入されている童話『カラスの王子』(原題)も続きが楽しみだったなあ。話はおなじみなものですから先はわかるけど──あ、これってもしかして本編では男女逆ってこと?
(★★★★)

最終更新日 : 2023-05-27

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