2009 · 07 · 27 (Mon) 15:48 ✎
▼『誰かに見られてる』カレン・ローズ(文春文庫)
検事補であるクリスティンの車のトランクから発見されたケースの中には、彼女が有罪にしようとしても叶わなかった犯罪者たちの死体の写真があった。犯人──〈つつましい僕(しもべ)〉が彼女に代わって制裁を下したのだ。写真発見時に居合わせた刑事のエイブらが捜査に当たるが、事件はクリスティンにも、そして犯人にとっても思わぬ方向へ転がっていく。("I'm Watching You" by Karen Rose,2004)
検事補であるクリスティンの車のトランクから発見されたケースの中には、彼女が有罪にしようとしても叶わなかった犯罪者たちの死体の写真があった。犯人──〈つつましい僕(しもべ)〉が彼女に代わって制裁を下したのだ。写真発見時に居合わせた刑事のエイブらが捜査に当たるが、事件はクリスティンにも、そして犯人にとっても思わぬ方向へ転がっていく。("I'm Watching You" by Karen Rose,2004)
カレン・ローズは、ハヤカワ・ミステリ文庫から出ている『暗闇に抱かれて』を読んでいます。これは今回の作品のスピンオフ──ヒーローの弟の話なんだよね……。いや、別に前後しても全然支障はないのですが、同じシリーズなのに、どうして別の出版社から出るのかしら。(ぶつぶつぶつ……)
『暗闇に抱かれて』は早々に犯人がわかってしまったので、ちょっと残念だった……。わかっても面白く読める時もあるんだけど、わかるとそのためのレッドヘリングが見えてしまう場合もあって、『暗闇に抱かれて』は後者だったんだよね。けど、今回の作品は全然わからなかった! 犯人にも感情移入できるような話だったからかなあ。
分類をロマンスではなくしようか、と思ったくらい、サスペンスの部分も満足できるものでした。金や脅しやねじくれた判断で無罪放免になった犯罪者たち(特に性犯罪者)が次々と殺され、それを捧げられるヒロイン──作中に描き込まれているヒロインの胸中や、当時の被害者たちの気持ちを思うととても笑えませんが、犯人が〈正義の味方〉と評されるのもむべなるかな、です。ちょっと応援しちゃうさ。描きようによってはまったく違う話(必殺シリーズみたいなのとか)になるでしょうが、現実にはこういう展開になるよね。
ヒーローとヒロインのロマンスは、真面目で誠実で、時間をかけて熟成していくようでした。二人とも過去にいろいろあって、未来に目を向けることを拒否してきたけど、この出会いによって変わってきます。けど、人間的に惹かれたのは、二人よりもやっぱり犯人の方だったなあ。遅すぎた自分が、いろいろ許せなかったのかなあ、とか考えたよ……。
こんなふうにストーリーも、ヒーローとヒロイン両方が抱える過去も、犯人の正体も、みんなみんな重く暗く痛く悲しいものなのに、読後感はあまり悪くないし、長いというより読み応えあると感じたな。決して手放しでハッピーエンドとは言えないと思うけど(いや、ロマサスらしい終わり方だけど)──。
あ、そうだ、読んでいて横溝正史を思い出したの。彼の作品も、過去の事件や長年の恨みが引き金になっているのが多いし、金田一耕助はたいてい間に合わない(・ω・`)。でも、膿出しはそれで終わるんだよね。死んだ人はたくさんいるけど、幸せになる人もいるし、そうじゃなくても未来につながる道を隠すものはなくなるんだよ。だから、妙にさわやかだったりするのです。それと似た読後感があったなあ。
(★★★★)
『暗闇に抱かれて』は早々に犯人がわかってしまったので、ちょっと残念だった……。わかっても面白く読める時もあるんだけど、わかるとそのためのレッドヘリングが見えてしまう場合もあって、『暗闇に抱かれて』は後者だったんだよね。けど、今回の作品は全然わからなかった! 犯人にも感情移入できるような話だったからかなあ。
分類をロマンスではなくしようか、と思ったくらい、サスペンスの部分も満足できるものでした。金や脅しやねじくれた判断で無罪放免になった犯罪者たち(特に性犯罪者)が次々と殺され、それを捧げられるヒロイン──作中に描き込まれているヒロインの胸中や、当時の被害者たちの気持ちを思うととても笑えませんが、犯人が〈正義の味方〉と評されるのもむべなるかな、です。ちょっと応援しちゃうさ。描きようによってはまったく違う話(必殺シリーズみたいなのとか)になるでしょうが、現実にはこういう展開になるよね。
ヒーローとヒロインのロマンスは、真面目で誠実で、時間をかけて熟成していくようでした。二人とも過去にいろいろあって、未来に目を向けることを拒否してきたけど、この出会いによって変わってきます。けど、人間的に惹かれたのは、二人よりもやっぱり犯人の方だったなあ。遅すぎた自分が、いろいろ許せなかったのかなあ、とか考えたよ……。
こんなふうにストーリーも、ヒーローとヒロイン両方が抱える過去も、犯人の正体も、みんなみんな重く暗く痛く悲しいものなのに、読後感はあまり悪くないし、長いというより読み応えあると感じたな。決して手放しでハッピーエンドとは言えないと思うけど(いや、ロマサスらしい終わり方だけど)──。
あ、そうだ、読んでいて横溝正史を思い出したの。彼の作品も、過去の事件や長年の恨みが引き金になっているのが多いし、金田一耕助はたいてい間に合わない(・ω・`)。でも、膿出しはそれで終わるんだよね。死んだ人はたくさんいるけど、幸せになる人もいるし、そうじゃなくても未来につながる道を隠すものはなくなるんだよ。だから、妙にさわやかだったりするのです。それと似た読後感があったなあ。
(★★★★)
最終更新日 : -0001-11-30