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2009 · 08 · 05 (Wed) 22:17

●『夜の炎』キャサリン・コールター

●『夜の炎』キャサリン・コールター(二見文庫)
 1811年、イギリス。レイヴンズワース伯爵バークは、15歳の美しく明るい少女アリエルと出会い心奪われるが、彼は戦地に赴かなければならない身の上だった。3年後、彼女を妻にしようと故郷へ帰った彼は、すでに未亡人となったアリエルと再会する。だが彼女は、亡夫からの虐待のため、かつての少女とは別人のようになっていた。("Night Fire" by Catherine Coulter,1989)
・〈夜(ナイト)トリロジー〉シリーズ第1作

 意を決して読んだ一冊です。みんな怖がるよね、『夜の炎』って。
 かなりの覚悟で読んだのですが、それでもヒロインへの虐待描写はつらかった。容赦ないです。レイプ以外の性的虐待をほとんどやられているのがありありとわかる。レイプされてないからいい、というレベルではないですよ。結局は文字通りの奴隷だったわけですから。ヒーローがそれを知った時の怒りは、すごく実感できます。私と同じように思ったはず! 亡夫を百年殺し続けたい。
 ヒロインのトラウマはハンパじゃないので、ヒーローに対しても頑なに心を開きません。ついこの間、「毅然としたヒロインの話が読みたい。流されるのが多すぎる。グーで殴るくらいの気概が欲しい」と言った気がするのですが、ここまでのは望んでいなかったです(´∀`;)。気概で拒んでいるわけじゃないけど、グーパンチもするし(ヒーローに対してじゃないけどね)。
 ヒーローは、ヒロインの受けた虐待を傷痕で知り、凄まじい怒りを抱くとともに彼女の男性不信と恐怖を取り除こうと必死になります。知らなかったとはいえ、それまで無意識でしていたことも彼女を怯えさせていたと悔いる。初めて会った時みたいに愛してくれるようにと願いながら、ひたすら献身的に彼女を支える。おそらく、この時代の男性としては、非常に珍しい人だと思う。こんなふうに女性の受けた傷を自分のことのように理解し、すべてを受け入れて愛してくれる男性を見つけるのは、現代でも大変なはず。
 とはいえ、彼にも結婚するまでの愛人がいたりして、ヒロインのトラウマを知るまではごくごく普通の人だったと言えます(それを表したかったがための愛人の存在のように思う。割とぞんざいな扱いだし)。それは多分、ヒロインにも言えることで、実際に当時の女性の感覚を代弁している女性も作中に登場するしね。でも、ヒストリカルだからこその女性を蔑視する極端な言動は、この作品が発表された1989年に限らず、20年たった今でも脈々とある。作者がここまでのひどい虐待を描いたのは、男性にも女性にも「虐げられるということはあってはならないことだ」と思わせるため、とも言えます。「今だって同じなんだよ!」という叫びが聞こえてくるようです。
 コールターは『エデンの彼方に』でもヒロインを強くしていきましたが、この作品のヒロインはもっと強い。強いというか、この最後の対決はロマンスじゃないだろ(^^;)。ヒロインの危機は、ヒーローが救う(あるいはその逆)。それがロマンスのセオリー。けど、これのヒロインは、自分で終わらせる。自分に害を与えた人間にきっちり落とし前をつける。いや、ずいぶん乱暴といえば乱暴な結び方なのですが、自分で決着をつけなきゃ本当の意味で生き残ることはできないんだよね。それは、加害者に対してだけでなく、自分の中の恐怖や自己否定を克服するということで──ヒロインが生還した時にヒーローへ言うセリフ、
「わたしは強かったの」
 それを言う勇気を得るためには、ヒーローの愛と献身ももちろんあったけれども、ほめられるべきはやはりヒロイン本人なのです。
 この作品は確かにロマンスなんだけど、ロマンスとしての甘さを望むとけっこう怪我してしまう作品です。でも、純粋に小説として面白いんだよね。テーマ的にも、古くならないし。これからも、怖がられながらも読み継がれていく作品なんだと思います(´∀`;)。
(★★★★)

最終更新日 : -0001-11-30

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