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2009 · 12 · 25 (Fri) 22:00

●『黄金の翼』アイリス・ジョハンセン

●『黄金の翼』アイリス・ジョハンセン(二見文庫)
 18世紀末、バルカン半島の小国タムロヴィアの王の姪であるテスは、流砂に沈もうとした時、砂漠の国セディカーンの族長(シャイフ)ガレンに助けられる。祖国統一の野心に燃える彼は、それから6年後、修道院から戻ったテスの前に現れ、国にいる限り手に入らない“自由”を彼女に与えることを餌に、3年間の政略結婚を持ちかける。("The Golden Barbarian" by Iris Johansen,1991)
・〈セディカーン〉シリーズ

 ジョハンセンのヒストリカルはなるべく読むようにしてるんだけど、これは比較的初期のものなのかな? 最近、これくらいの頃の作品が多く訳されているような気がする。うれしいけど。
 シャイフ──シークものです。私が苦手なシーク! とはいえ、それはコンテンポラリーに関して。現代物だとなんちゃってシークが多いし、そもそもシークである必要もないってのも。イタリア人とかギリシャ人と同じカテゴリーなのかなあ。
 けどまあ、ヒストリカルだとシークは本当にシーク扱いなので(変な日本語)、違和感はあまりありません。“野蛮人”と言われることを何より嫌うヒーローだけど、そういうイメージは現代のシークものにも漂っているよね。異国情緒と同等くらいのイメージだけれども。
 とはいえ、“野蛮”の基準は各国の価値観や時代にもよるわけだし、どうにも相容れない、平行線の部分というのもある。ただ「女は男の持ち物」みたいなのが共通の価値観としてこの作品には描かれている。ヒロインがそれに反発し、ヒーローも同調するなんてことは、本当だったらすっごく珍しいことだったんだと思うよ。
 ヒーローはそんな生命力あふれるちっこいヒロインにメロメロ。初めて会った12歳の時から目をつけていたらしいです。取引としての結婚をしてからも、嫉妬や独占欲全開。ヒロインはいまいちわかっていないけど。最初の方はちょっと子供っぽいです。いい意味で奔放、悪い意味でわがまま。自分の欠点をちゃんと承知しているし、頭が悪いわけではないので、「周りの人は大変だな」と思う程度でしたが。後半がんばります。
 楽しく読めたけど、ちょっとこじんまりした感じだった。でも、それはそれでほどよい読後感。
(★★★☆)

最終更新日 : -0001-11-30

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