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●『罪深き愛のゆくえ』アナ・キャンベル

●『罪深き愛のゆくえ』アナ・キャンベル(二見文庫)
 1828年、ロンドン。魔性の女と言われる高級娼婦ソレイヤは、カイルモア公爵との愛人契約が切れた日に忽然と姿を消した。三ヶ月後、彼女は本名のヴェリティ・アシュトンとして田舎でひっそりと暮らし始める。だが、カイルモア公爵は彼女の居場所をつきとめ、荒涼としたハイランドの館へと連れ去る。("Claiming The Courtesan" by Anna Campbell,2007)



 ヒロインは高級娼婦というか、プロの愛人です。専属の長期契約。それしか売るものがなかったし、幼い弟と妹がいたから仕方なく選んだ道です。でも、相手にしたのはヒーローを含めて3人で、ある意味ヒーローが一番たちの悪い奴(^^;)ですから、思ったよりも悲惨な過去ではなかったな。むしろ運のいい方ではあるまいか。娼婦と貴族のロマンスで面白かったものというとリディア・ジョイスの『水の都の仮面』を思い出しますが、こっちの方がヒロインは悲惨だった。
 しかし! この作品はヒーローの方がさんざんな目にあっています。幼少期の父親の虐待に始まり、寄宿学校でのいじめ、強欲で自分勝手な母親(超ひどいバカ女(-"-;))との確執などなど。もちろん特権階級ですから、庶民の苦労からすれば「ケッ」と言われるようなものかもしれませんけど、作者そう言われないようにしたかったのか、ヒーローをかなり徹底的に歪ませています。
 その結果、ヒーローは立派なストーカーに成長(´∀`;)。6年前に出会ってから、ヒロインを手に入れたくてずっと口説き続ける。ようやく愛人契約を結んだのもつかの間、彼女が逃げたとわかるやいなや、恥も外聞もブライドも捨てて、文字どおり半狂乱で探し回り、三ヶ月後執念で見つけ出す。一緒にいた弟から引き離し、ハイランドに拉致ります。
 海外ロマンスでは珍しい狂愛系のお話。日本でもあまりないか……いや、執着ものとするなら、そんなに珍しくないかも。谷崎潤一郎とか。ネット小説だと、狂愛ものはバカスカ見つかるけどね! 基本的に日本人は好きなんだと思う、執着系狂愛系って。
 とはいえ、ロマンスだと狂ったまま突っ走らない。ハイランドの孤立した館で過ごし、一年一緒に過ごしたのに表面しか見なかった互いのことを深く知るうち、ヒーローから変質者や鬼畜な香りが抜け落ちていくのがちょっと残念だった。どんどん優しくなっちゃって(´д`;)……。しかし、ストーカー気質は最後まで持っててくれてよかった。まさか、そこまで計算した伏線だったってわけじゃあるまいな……。
 構成はシンプルそのものです。ある意味、正統派。「娼婦と貴族(しかも公爵)」というのが究極の身分違いであるということを絶対に忘れない展開は、シンデレラストーリーを期待すると少ししんどいかもしれませんが、私は好きだ。だからなのか、二人の幸せな生活が垣間見えるエピローグはないけど、
「荒野のお城には、キ○ガイ公爵が魔性の娼婦を妻にして暮らしている」
 というロンドン社交界の噂を想像するのも、また楽し。
(★★★★)
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tag : ヒストリカル 二見文庫 ★★★★

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    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
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