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●『誘惑の晩餐』シェリー・トマス

●『誘惑の晩餐』シェリー・トマス(ソフトバンク文庫)
 1892年英国。ヴェリティの雇い主、バーティ・サマセットが亡くなった。彼の弟で下院議員のスチュアートが遺産の屋敷とともに彼女を雇い入れる。当代随一の料理人と称される彼女には、様々なスキャンダルがつきまとう。バーティの愛人というのもその一つだ。そんな警告を受けたスチュアートだったが、彼女の料理を一口食べた瞬間、かつて求めてやまないものが自分にもあったことを思い出す。("Delicious" by Sherry Thomas,2008)



 シェリー・トマスの一作目『もう一度恋をしたくて』を持っているのをすっかり忘れて、二作目のこっちを先に読んでしまった。とはいえ、つながりはないようなので、セーフ。
 最初、前書きのように、
「これはシンデレラ・ストーリーだ」
 と宣言されていますが、おとぎ話の甘さはありません。大人の味わい。過去にいろいろあった男女が、切ない紆余曲折を経て結ばれるお話。しかも、ヒロインの過去の方が重いです。シンデレラは無垢ではない。だからこそ、靴を残してヒーローから去っていくのです。
 ヒストリカルの階級意識というのは、ファンタジーとしてのロマンスでは現代風の考え方という糖衣にくるまれていることが多いですが、この作品ではあまりそういうことはしてありません。だからか、最初少し読みづらかった……。ちょっと甘々なのを読み過ぎていたか。でも、ストーリーがごくシンプルだったので、そういう切なさがしっかりクライマックスに貢献していました。HOTシーンが控えめなのもいいです。

 ただ──とってもとっても個人的なことなのですが……私は、実は小説や映画の中に出てくる「食べ物」というものに並々ならぬ情熱を傾けている人間なのです。他のことは全部忘れていても、主人公が何を食べていたのか、というのだけは憶えている、というくらい食い意地の汚い人間なのです(^^;)。
 なのになぜか、この作品に出てくる食べ物にはちっともそそられない。料理人の話なのに。いや、おいしそうだし、ちゃんと効果的に使われています。官能を刺激する、というのもそのとおりだと思います。でも、そそられない。そそられる、というのはつまり、「食べたい!」「腹減った!」という原始的な欲求に駆られる、ということですが。
 何でだろう……。料理がメインのようでいて、メインではないから? あるいは、その逆だから? フランス料理にあまりなじみがないから? セックスという別の原始的欲求に取って代わられてるから?
 ちょっとわからないな。けど、ロマンス小説の中で、料理がおいしそうって思う作品ってあまりないですよ。ぱっと浮かんだのが、『ジェイン・エア』に出てきた「焼いた玉ねぎを乗せたトースト」だもの。しかも、ジェインは食べてない(^^;)。
 ダイアナ・パーマーやリンダ・ハワードの小説に出てくる牧場で食べる食事とかは割と好きだな。手作りのビスケットとか、ぶ厚いステーキとか(^^;)。荒川弘の『百姓貴族』の世界……。
 うーん、やっぱりフランス料理だからかなあ。お菓子とかはもっと身近なはずなんだけど、ピンと来なかった……。
 あ、もしかしたら、料理そのものの力、というのを描こうとしたからなのかも。うまく言えませんが、ヒロインは単なる「おいしいもの」以上のものを作ろうとした、ということなのかな?
 なるほどね。この作品は、「おいしい」とはまた別のことを「料理」を通して表現しようとした、ということなのかもしれません。私が興味があるのは、「料理」じゃなくて、「おいしいもの」あるいは「おいしいと思う気持ち」なんだ。単純な食の歓び。
 そういえば、『バベットの晩餐会』という映画があるんですが──バベットという天才女料理人が、世話になった田舎の村人たちに最高級の料理をふるまうというお話。憶えているのは、狭いキッチンで作られる夢のような料理ではなく、それを食べた村人たちの放心したような、でも幸せそうな顔だけだもんね。
 ヒーローには、ヒロインの料理を食べて幸せになるシーンがもっとあってもよかったんじゃないかな、と今更思った。いや、料理をどう表現しようと作家の自由なのですが──でも、せっかくおいしい料理が作れるのに……それこそ、のだめのピアノを聞く千秋のようにさあ。
(★★★★)
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tag : ヒストリカル ソフトバンク文庫 ★★★★

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    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
    評価は★★★★★が満点、★★★が標準点クリア。
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