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2010 · 05 · 26 (Wed) 14:38

●『悲しみに聖女の祈りを』キャリン・モンク

●『悲しみに聖女の祈りを』キャリン・モンク(ランダムハウス講談社)
 子爵の娘であるジュヌヴィエーヴは、不当に重い刑を科せられた身寄りのない子供を引き取り、世話している。その日も盗みを働いた少年に会うため監獄を訪れた。そこで少年の代わりに看守から暴力をふるわれている男に出会う。翌日には絞首刑にされるという彼は、ジュヌヴィエーヴに「無実を信じてほしい」と訴える。("The Prisoner" by Karyn Monk,2001)

 放蕩男の改心もの──にしては、内容が重くハードです。
 ヒーロー、レドモンド侯爵ヘイドンは見知らぬ男たちに襲われ、一人を正当防衛でやむなく殺してはいますが、実際は襲った者たちによってもっと激しく暴行を加えたことになっています。とはいえヒストリカルですから、ちゃんとした捜査などはありません。ヒーローを殺そうとした者にとってはラッキー、ヒーローにとっては最悪の事態です。彼は脱獄し、ヒロインの家へ逃げ込みます。
 けど、この事態は彼の自業自得と言えるところも多分にある。発端は、放蕩者らしい軽率で適当で浅薄な彼自身の行動であり、一応自覚しているとはいえ、本当に理解するのはラスト近くになってから。
 このヒーローの行動と悲劇の真相を受け入れられるかどうかで、評価が分かれるかなあ、と思います。子供のことだし、かなりかわいそう……。大人たちはそれぞれ悪いし、誰が防げたか防げなかったか、というのもあるんだけど、「ヒーローなのに!」という気持ちは私もけっこう強かった。
 でも、ヒロインが彼の過去を受け入れ、その上で二人の未来に目を向ける、ということを表した時、ヒーローの自分を許せない気持ちが溶けるのと同じに、私自身も納得することができた。そこまで、「理屈では許せても、ひどいことには変わりない」みたいに思っていたはずなのに、いつの間にか彼に感情移入していたんだね。
 それは、ヒロインのキャラに説得力があったからだと思います。貴族のお嬢様としての優しさではない。教育もしつけもされていない子供を監獄から引き取り、読み書きを教え、金策に走り、家事もする。まだ若くて美しいけど、聖女というより、立派な肝っ玉母さんなのです。そしてもちろん、一人の女としての淋しさも抱えている。
 子供たちの描写もよかった。困ったこともしてしまうけど、みんなお母さんが大好きで。この子たちが元気だから、もう一人の子供のことがより悲しいんだろうね……。
(★★★★)

最終更新日 : -0001-11-30

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