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◆『幻想を求めて』スーザン・エリザベス・フィリップス

◆『幻想を求めて』スーザン・エリザベス・フィリップス(二見文庫)
 三度の結婚を経て一人になったシュガーベスは、15年ぶりに故郷のパリッシュへ戻ってきた。かつて女王のようにこの街に君臨していた自分の愚かな過去に怯えながら。生まれ育った壮麗な屋敷には、彼女を恨んで当然の元高校教師、今は作家のコリンが住んでいる。虐げていた内気な少女はこの街の実力者だ。それでもシュガーベスは、ここで叔母の遺した有名画家の絵を探さなくてはならない理由があった。("Ain't She Sweet?" by Susan Elizabeth Phillips,2004)



 ズルい男、逃げる男など、いわゆるろくでなしを書かせたら世界一──と思っているスーザン・エリザベス・フィリップス(SEP)ですが、この作品では、何とヒロインがろくでなしです。
 故郷を出るまでの間、美しく頭もよくお金持ちで、母親に溺愛され何もかもが許される特権階級のお嬢様だったヒロインの行状は、何一つ弁解の余地はない。もちろん、両親ともに彼女をちゃんと教育しようと思っていなかったわけですから、ほぼ野生動物──保護されてるから店のものを盗んでもどうにもできないニホンザルのようなもの。だからって異母妹に陰湿ないじめをしてもいいとわけではないけど誰もとがめず(母親が怖くて口を出せず)、唯一とがめた新任教師のイギリス人ヒーローを国外追放する。
 こんなことされたら、いくら高校生のやったこととはいえ、一生恨まれてもおかしくないんじゃないか──。けどヒーローは、一応復讐はするものの割とあっさり許してしまう。
 それは、彼がろくでなしでないからじゃなくて(いや、本当にろくでなしじゃないですよ)、あの出来事が自分を作家にしたとわかっているから。最大のネタの提供者であり、相変わらずやっかいごとの根源であり、故に自分のミューズであるヒロインへの恨みはそうそう持続しません。
 だからロマンスに関しては、ヒロインのろくでなし故の臆病さでひっぱるラストがちとウザいと思いながらも、割と安心して楽しみました。それより、異母妹との関係の方がハラハラした。
 異母妹夫婦(夫はヒロインの元彼)の見えない確執とその娘の悩み、絵を探す理由、そして住人や南部の街そのものにもキャラがあり、それぞれに読み応えがあります。長いですが読みやすく、思ったほど重くもない。
 こういういかにも憎まれそうなキャラをヒロインに据えるというのは勇気あるな、と思いつつ、いつもの奴を女に変えただけでは、とも思ったりして(´∀`;)。
 まあとにかく──SEPはやっぱり、愛すべきろくでなしを書くのが世界一うまいんだなあ。

[6/10追記]
〈シカゴ・スターズ〉シリーズとは直接関係ありませんが、『湖に映る影』を読んでいるとニヤリとするシーンがあります。
(★★★★)
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tag : コンテンポラリー 二見文庫 ★★★★

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    Author:三原 白
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