Top Page › 読書の感想 › あ行の作家 › ●『罪深き純愛』アナスタシア・ブラック

2010 · 06 · 15 (Tue) 15:17

●『罪深き純愛』アナスタシア・ブラック

●『罪深き純愛』アナスタシア・ブラック(ソフトバンク文庫)
 夫以外の男性と関係を持ったと噂され、それが元で夫を亡くしたエリサ。彼女は社交界から追放され、幼い息子まで取り上げられてしまう。誰からも見向きもされないエリサに手を差し伸べたのは老侯爵のルーファス。息子を探してくれると言う彼とエリサは婚約するが、ルーファスの息子ヴォーンが現れたことで、事態は思わぬ方向へ転がっていく。("Forbidden" by Anastasia Black,2002)

 うーん、モヤモヤ……。
 正直言って、ヒロインにもヒーローにも感情移入できませんでした。何でかなあ……。
 わかりやすいのはヒロインです。息子を探すために頼れるのはヒーロー父だけ、と思っていて、そのためだけに婚約を受け入れる。けど、ヒーローにひと目ぼれしてしまい、彼に迫られるとついついよろめいてしまう。「こんなことはいけないわ」と言いつつダメダメ。そのよろめき具合と人目に無頓着な脇の甘さは、かなり昼メロテイストです(いや、もちろん昼メロには昼メロのいいところがありますが)。言い逃れるために人のせいにしたり、考えなしに動物を死なせたり、あまり友だちにはなりたくないなあ、と思うようなところもあり。
 ヒーローの方は、憎むべき父親への復讐の意味もこめての誘惑、みたいなことをあとで言ったりしますが、最初の方でそんなふうには見えないような……ただただ、ヒロインを追いかけ回しているようにしか。いや、実は本当にそうなんですが、せっかくだからそのあとづけを利用すればよかったのに。だって、
「いやって言ってるのにしつこいなあ」
 そんなふうに読めてしまいました。逃げるメスを延々と追っかけるオスの鳩のように、とにかく盛っているだけの男(^^;)。ヒロインの拒否が「嫌よ嫌よも好きのうち」だとしても。だから、“復讐のため”でも何でも建前でもいいから明確な理由があった方が、話が締まったかなあ。
 婚約した事情を、ヒロインがヒーローにもっと早く話してもいいんじゃないか、とも思った。身内のことなんだし、引き延ばさないではっきり言った方が自然ではないか、と。そして、それに対してヒーロー、「じゃあ、俺が息子を探す」くらい言ってもいいんじゃないか? 言ってしまっても、別に話は終わらないはずだし、ちゃんと父が探してるかどうかヒーローが確かめることくらい、予想もつくし。
 話をプロット通りに進めるためなのか、見せないようにしている部分の隠し方がとても作為的で、しかも申し訳ないのですがあまり上手でない……。
 そのせいか、ラストも説得力がなかったなあ。うーん……。
(★☆)

最終更新日 : -0001-11-30

Comments







非公開コメント