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2010 · 08 · 10 (Tue) 12:28

●『王子に魔法をかけられて』パトリシア・グラッソ

●『王子に魔法をかけられて』パトリシア・グラッソ(ソフトバンク文庫)
 伯爵家の娘ながら苦労して育ったサマンサは、初めての舞踏会でロシア王子ルドルフとワルツを踊り、夢心地を味わう。だが、別れ際に再会を約束した彼は何ヶ月たっても現れず、サマンサは家族に言われるまま縁談を承諾する。婚約発表の日、突然ルドルフがやってくるが、二人は彼の弟の手の者によって誘拐されてしまう。("To Charm A Prince" by Patricia Grasso,2003)
・〈カザノフ〉シリーズ第1作

 起伏に富んだ展開と、ヒーローとヒロインの不器用なすれ違いが切ないお話でした。
 ヒロインは本当に苦労して育った女の子(まだ18歳)で、父親が財産を失っても誰にも頼らなかったので、舞踏会のほんの数ヶ月前まで、妹とともにスリをしていたのです。やっと後見人に父の旧友である公爵がついても、小さい頃に馬車に轢かれて脚が不自由になったので、結婚できないかもしれない、と思って、密かに老後に備えていたりします。
 いちいち泣かせる設定な上、ヒーローは王子ですから、その正反対。ただ、父王と弟に憎まれているので、秘宝であるメダリオンを持ち出し、母と娘とともにイギリスへ逃げてくる(亡命?)。
 結婚に対して大きな隔たりのある二人。身分や育ちや自分の脚のことを気にするヒロインと、元妻のことで傷つき、ヒロインが危険にさらされるのではないかと考えると再婚に踏み切れないヒーロー。彼は「結婚しない」とはっきり告げていたので、子供ができてしまったので結婚するってなると、むりやりということになり、ヒロインは「彼に愛されていない」と当然思う。
 二人ともとても不器用で、うまく気持ちを伝えられない。王子ですからヒーローが尊大であるのは生まれつきみたいなものだし、ヒロインにも「同情なんてしてほしくない」という絶対に捨てられないプライドがある。確かにそれがいろいろと邪魔にはなるんだけど、持たざるを得ない状況というのはちゃんとわかるので、「しょーもない」とは思いませんでした。むしろ切なくて切なくて──病院の待合室で読んでた時は、涙をこらえるのに苦労しました。
 とはいえ、切ないだけでなく、ヒロインがなかなか面白い。スリをしていたことで誘拐から逃れたり、ナイフ使いが得意だったり、身を隠したスコットランドで突然浮浪児を二人も拾ったり。頼りになるヒロインに対して、ヒーローははっきり言ってダメダメですよ(´∀`;)。かなり短気で頑固で子供っぽい。ヒロインにメロメロであっても、怒り心頭の時は説明も聞かない。王子様って肩書き以外に何があるというんだ! あ、顔はとても美しいけど。
(★★★★)

最終更新日 : -0001-11-30

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