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2010 · 08 · 24 (Tue) 06:30

◆『波紋』シャーロット・ラム

◆『波紋』シャーロット・ラム(ハーレクイン)
 クレアはロンドンの広告会社で社長ラリーのアシスタントとして忙しく働いていた。ある夜、ボーイフレンドのトムを気まずく追い返したあと、何者かがクレアの部屋に侵入する。覆い被さる身体に抵抗しても、男の力にはかなわない。全身を殴られ、クレアはなすすべもなかった。("A Violation" by Charlotte Lamb,1983)

 ハーレクインでこれを出したというのが、まず驚き(初出は1984年のハーレクイン・プレゼンツ)。私が読んだのは2007年のハーレクイン・シングルタイトル・コレクションですが、2001年にMIRA文庫でも出ていて、それには裏表紙のあらすじにはっきり「レイプ」と書いてあります。
 元々シャーロット・ラムの作品は甘みが少ないですけど、これはかなりの辛口。苦くて辛い(つらいとも読む)。というより、ロマンスじゃないです(一応ハッピーエンドではあるけど)。理不尽な暴力に遭った女性が立ち直るまでの物語。
 知らないで買ったから「どうしようかな」とずっと積んでおいたのですが……割と地雷の少ない私でも、ヒロインのレイプはやはりきつい。でも! シャーロット・ラムのヒロインは強いし、キャサリン・コールターの『夜の炎』だって大丈夫だったんだから(やっぱ基準はコレですよ)、きっと平気! その気になっている今を逃すといつまでも読めない、と思って読み始めました。
 物語はヒロインだけでなく、ルームメイトでモデルのパメラ、そしてヒロイン母という三人の女性に及んだ強盗レイプ事件の“波紋”を追っていきます。それを境に変わっていく三人。ロマンス的な展開ではないので、現実的でつらいことも多い。ヒロインはどうやったってつらいんですが、私が切なく思ったのはパメラのエピソード。ロマンスだとこの人も幸せになるのがデフォルトなのになあ。
 女性陣はそれぞれ悩み苦しみ、心理描写もリアル。特にヒロインの気分の浮き沈みの激しさとか罪悪感とか。男性陣も、犯人は暴力の象徴みたいに描かれてただけだったけど、ボーイフレンドのトム……自己中で思いやりのない発言とか、ムカつくけど「あーいるいる」って奴だった。
 けどヒーロー──社長のラリーには、あまりリアリティがなかったように思う。この人は、ロマンスのヒーローとして描かれていた気がします。あまり壊れ物を扱うような態度ばかりでもどうかなとは思うけど、傲慢なヒーローのままなんだよね。彼の立場からすると、愛する女性がレイプされてしまったわけで……それを守れなかった自分自身をどう思ったのかとか、犯人に対する怒りとか、彼女へ今後どう接したらいいのかとか──そういう苦悩があまり見受けられない(悩んでいたんだろうけど)。ヒロインの支えになってはいたでしょうが、ちょっとズレた感じ。彼より、自分の家にヒロインを一時住まわせてあげた彼の母親の方が、役に立っていたなあ。プライベートで信頼関係があったわけじゃないから、仕方ないんだけどね。
 古い作品だけど、女性の描写については普遍的であり、読み応えもあるのですが、残念なのはヒーローだ……。同じロマンスのヒーローのままなら、何もかも受け入れて包み込むような優しい男でもよかったはず。まあ、不器用な人であった、というのはあとでわかるんですが、彼女でなかったらこのラストはないな。そういう意味では、やはりシャーロット・ラムのヒロインは強かった。
(★★★☆)

最終更新日 : -0001-11-30

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