2011 · 11 · 15 (Tue) 14:09 ✎
●『あなたのそばで見る夢は』ロレイン・ヒース(二見文庫)
1876年。アメリアは、婚約者であるテキサスの牧場主ダラスの姿を駅で探していた。彼とは手紙を通して結婚を約束し合い、ジョージア州からはるばるやってきたのだが、現れたのは弟のヒューストン。足を折ったダラスのかわりに迎えに来たのだ。しかも、牧場は駅から荷馬車で数週間かかると言う。戦争で顔に傷を負った寡黙なヒューストンとその間、どう過ごせばいいのだろう──?("Texas Destiny" by Lorraine Heath, 1997)
・〈テキサス三部作〉第1作
1876年。アメリアは、婚約者であるテキサスの牧場主ダラスの姿を駅で探していた。彼とは手紙を通して結婚を約束し合い、ジョージア州からはるばるやってきたのだが、現れたのは弟のヒューストン。足を折ったダラスのかわりに迎えに来たのだ。しかも、牧場は駅から荷馬車で数週間かかると言う。戦争で顔に傷を負った寡黙なヒューストンとその間、どう過ごせばいいのだろう──?("Texas Destiny" by Lorraine Heath, 1997)
・〈テキサス三部作〉第1作
『愛を刻んでほしい』といい、これといい、なんでロレイン・ヒースはヒーローに過酷な運命を与えるのか……。・゚・(ノД`)・゚・。
彼は、現在の弟(年齢が「少年」と書かれているだけなんだけど、描写から鑑みると14、5歳くらい?)よりも年下だった頃、父親に南北戦争へ連れていかれ、顔の左側を吹き飛ばされて、左目と左耳の聴力を失い、醜い傷も残ってしまう。一緒に行った兄が目覚しい活躍をして、戦後大きな成功を手にしたのを尻目に、孤独で心を閉ざした人生を歩んでいる。
牧場へ行く旅の途中で寄った家の奥さんが何気なく言ったセリフが、彼を取り巻く環境を端的に表している。
「文通で呼び寄せた花嫁が来る途中でだれかに会って、呼び寄せた本人のもとに現れないことって珍しくないのよ。ヒューストンを迎えに行かせれば、それは起こらないとダラスは考えたんだと思うわ。彼となら、あなたは恋に落ちたりしないもの」
奥さんにもダラスにも悪気というか、他意がないところがまた悲しい(´・ω・`)。
ダラスは戦争で傷も負わず、とてもハンサムなまま(ヒーローも傷を負わなければそうだった)。父親自慢の息子で、欲しいものはすべて手に入れたいと思い、そのための努力も惜しまない。自信にあふれた彼の王国に足らないものは、あと妻と息子だけだったから、ヒロインと結婚しようと思ったのです。
その弟であるヒーローは、元々繊細な性格で、子供の頃から「軟弱だ」と父親に責められ続ける。さらに一番多感な時期に、戦争体験とむごい身体的な外傷と、父親を目の前で亡くすというトラウマでボロボロになり、戦後13年たっても癒されないまま。その上それを理解し、ありのままの自分を愛してくれた女は兄の婚約者──とか何、ロレイン・ヒースはSなの? ドSなの!?( ;Д;)
ヒロインをいたぶり抜くのがキャサリン・コールターなら、ロレイン・ヒースはそのヒーロー版、というところでしょうか(^^;)。
物語はシンプルです。兄にヒロインを送り届ける数週間の間にいろいろなことが起こり、二人の絆がしっかりと結ばれてしまうのだけれど、結婚は決まっていることなので──というだけ。ロマンスなのでハッピーエンドは約束されているけど、それでも、
「二人が結ばれないのではないか」
という危惧に支配されながら読んでしまう。その緊張感は、ロマンスではなく小説としての面白さです。
ヒーローは、はっきり言ってヘタレです。でもその自信のなさ、楽な方に流される様は、あまりに深い傷ゆえとわかるし、自分が黙っていれば兄とヒロインは幸せになるという独善的な気持ちを持ってしまう根拠も軽いものではない。苦しみや悲しみとともに生きることしか、彼は知らなかったんだから。
半分あきらめたヒロインが、ダラスと結婚したあとのことを想像しても、子供たちに彼らの叔父さんとの思い出を語ることしか浮かばない、というシーンが切ないです。滂沱の涙(TωT)。
シンプルな物語にロマンスの醍醐味をぎゅっと閉じ込め、小説としての緊張感や構成も見事。ロマンス小説でこういうのは、本当に久しぶりです。HOTシーンが欲しい人には物足りないかもしれないけど、私は大満足でした。
(★★★★★)
彼は、現在の弟(年齢が「少年」と書かれているだけなんだけど、描写から鑑みると14、5歳くらい?)よりも年下だった頃、父親に南北戦争へ連れていかれ、顔の左側を吹き飛ばされて、左目と左耳の聴力を失い、醜い傷も残ってしまう。一緒に行った兄が目覚しい活躍をして、戦後大きな成功を手にしたのを尻目に、孤独で心を閉ざした人生を歩んでいる。
牧場へ行く旅の途中で寄った家の奥さんが何気なく言ったセリフが、彼を取り巻く環境を端的に表している。
「文通で呼び寄せた花嫁が来る途中でだれかに会って、呼び寄せた本人のもとに現れないことって珍しくないのよ。ヒューストンを迎えに行かせれば、それは起こらないとダラスは考えたんだと思うわ。彼となら、あなたは恋に落ちたりしないもの」
奥さんにもダラスにも悪気というか、他意がないところがまた悲しい(´・ω・`)。
ダラスは戦争で傷も負わず、とてもハンサムなまま(ヒーローも傷を負わなければそうだった)。父親自慢の息子で、欲しいものはすべて手に入れたいと思い、そのための努力も惜しまない。自信にあふれた彼の王国に足らないものは、あと妻と息子だけだったから、ヒロインと結婚しようと思ったのです。
その弟であるヒーローは、元々繊細な性格で、子供の頃から「軟弱だ」と父親に責められ続ける。さらに一番多感な時期に、戦争体験とむごい身体的な外傷と、父親を目の前で亡くすというトラウマでボロボロになり、戦後13年たっても癒されないまま。その上それを理解し、ありのままの自分を愛してくれた女は兄の婚約者──とか何、ロレイン・ヒースはSなの? ドSなの!?( ;Д;)
ヒロインをいたぶり抜くのがキャサリン・コールターなら、ロレイン・ヒースはそのヒーロー版、というところでしょうか(^^;)。
物語はシンプルです。兄にヒロインを送り届ける数週間の間にいろいろなことが起こり、二人の絆がしっかりと結ばれてしまうのだけれど、結婚は決まっていることなので──というだけ。ロマンスなのでハッピーエンドは約束されているけど、それでも、
「二人が結ばれないのではないか」
という危惧に支配されながら読んでしまう。その緊張感は、ロマンスではなく小説としての面白さです。
ヒーローは、はっきり言ってヘタレです。でもその自信のなさ、楽な方に流される様は、あまりに深い傷ゆえとわかるし、自分が黙っていれば兄とヒロインは幸せになるという独善的な気持ちを持ってしまう根拠も軽いものではない。苦しみや悲しみとともに生きることしか、彼は知らなかったんだから。
半分あきらめたヒロインが、ダラスと結婚したあとのことを想像しても、子供たちに彼らの叔父さんとの思い出を語ることしか浮かばない、というシーンが切ないです。滂沱の涙(TωT)。
シンプルな物語にロマンスの醍醐味をぎゅっと閉じ込め、小説としての緊張感や構成も見事。ロマンス小説でこういうのは、本当に久しぶりです。HOTシーンが欲しい人には物足りないかもしれないけど、私は大満足でした。
(★★★★★)
最終更新日 : -0001-11-30