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2011 · 11 · 24 (Thu) 12:21

●『唇泥棒にご用心』スーザン・イーノック

●『唇泥棒にご用心』スーザン・イーノック(扶桑社ロマンス)
 1813年、ロンドン。ナポレオン戦争で負傷したサリヴァンが帰国する間に亡くなった母の遺品である絵画が、彼の実の父ダンストン侯爵によって売り払われた。自分を息子と認めない侯爵とその嫡子への復讐のため、サリヴァンは母の絵を盗み集めていた。ある夜、忍び込んだダーシェア侯爵邸から逃げようとした時、その家の娘イザベルに見つかってしまう。悲鳴をあげる前に、サリヴァンは彼女の唇をキスでふさいだ。("After The Kiss" by Suzanne Enoch, 2008)
・〈悪名高き紳士たち〉シリーズ第1作

 風邪をひいたことも読み終わるのが遅くなった一因ですが、メインはやはり、ヒロインのことがあまり好きになれなかったという──orz
 高飛車でわがままなお嬢様というのは、ロマンスの主役として難しいと思うんだよね……。アホに見えたり、イライラしたりして、下手すると読者から嫌われてしまうから。私は特に、ヒロインがアホだとテンションだだ下がりになってしまうので(´・ω・`)。
 アホヒーローにも腹を立てますが、やはり主役は女性で、その立場から偉そうに怒り狂うのが楽しいわけですよ。でも、主役がアホだと、つまり基本的な話を回すのがアホということになってしまうから、怒りよりも読者としてのガッカリ気分が優ってしまうのです。(アホをアホとして描くのは、また別ですが(^^;)、ロマンスはそうじゃないからなあ)
 まあ、この作品の場合、ヒロインを「アホ」というのは酷かもしれない。きちんと説明すると、今まで何も考えていなかった女の子です。自分の環境や取り巻く人々に何の疑問も抱かず、狭い世界しか知らなかったし、それ以外に目を向けようともしなかった人。ヒーローに出会って、19歳にして初めて考えるようになった。『2001年宇宙の旅』冒頭で骨を道具として使った猿と変わりません。
 発展途上の頭で、ややこしくなった自分とヒーローの関係や、彼の復讐心を何とかしようとがんばるわけですが、自分が何ができて何ができないのか、そして、何をすべきなのか何をしたいのかというのが、なかなかわからない。そして、読んでる私にもわからない(´ω`;)。
 ヒーローは彼女にベタ惚れなので、それに振り回される。でも、身分が違うから結婚もできないし、盗みがバレたら警察に捕まって死刑にされてしまう。それでも自分はいいけれど、ヒロインの評判が落ちてしまうから、彼は身を引くことを考えてしまいます。
 こういう状況だと、「二人が結ばれないのではないか」と思ってもおかしくない。ことさらに「身分違い」を強調していたし。けど、そういう切なさは感じなかったんだよねえ。逃げ場のない状況ではないし、ラストも想像できてしまってそのとおりだし。
 ヒロインの馬へのトラウマも、単に二人を接近させるためのエピソードで終わってしまっている。「身分違い」「社交界の評判」というものの理不尽さというか、いわゆるDQNぶりにもムカついたし。
 スーザン・イーノックはとても好きな作家なんだけど、うーん、ちょっとこれはいかんかった……(TωT)。続きは──ヒロインが変われば大丈夫だと思うけど。特にブラムウェル卿の話は読みたいな。
(★★☆)

最終更新日 : -0001-11-30

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