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2012 · 02 · 10 (Fri) 13:42

●『その心にふれたくて』アナ・キャンベル

●『その心にふれたくて』アナ・キャンベル(二見文庫)
 強欲な継兄たちから監禁・暴力を受け続けていた伯爵令嬢カリスは、屋敷から脱走し、宿屋の厩に姿を隠していた。それを見つけたのは“国家の英雄”といわれるギデオン・トレヴィシック。三週間後に迫った誕生日まで逃げ切れれば、継兄たちが狙う財産はカリス一人のものになる。助けようとするギデオンを信用しきれないカリス。だが、彼もまた秘密を抱えていた。("Captive Of Sin" by Anna Campbell, 2009)

 ヒーロー、両想いだけどほとんど童貞の片想い状態で、悶えに悶えまくる。
 それは、インドでスパイ活動をしていた時に囚えられ、一年間拷問を受け続けたせい。それも、一緒につかまった仲間の死体を両手につながれたまま、という壮絶なもの。人に触ったり触られたりすると、その時のフラッシュバックが起こり、発作(吐き気や頭痛など)が起こる。
 いわゆるPTSD──心的外傷後ストレス障害状態ですね。
 だから、前半ヒロインに触りたくてたまらないんだけど、触れないという葛藤に苦悩しまくる。この状況はなかなか斬新でした。すぐに手を出す我慢のきかないヒーローがほとんどの中、「したくてもできない」というのが悲しいんだけど、誤解覚悟に言えば、ある意味滑稽でもあった。ヒロインを前にすると妄想が止まらないし、この文章には、思わず吹き出してしまった。

 ギデオンはごくりと唾を呑みこんで、刺激とはほど遠いことばを思いつくかぎり頭に並べていった。ハツカダイコン。カブ。キャベツ。ニンジン。
 いや、ニンジンはだめだ。


 本人が真剣なだけに、かわいそうと思いながらも笑ってしまったよ(´∀`;)。
 それから、ヒーローが自分のことをここまで卑下するのも珍しい。それもまたPTSDのせいで、自責感(自分一人だけ生き残ったこと)にかられ、“国家の英雄”と呼ばれることに耐えられないくらい恥を覚えてしまう。自分なんて生きている価値がない、もう自分の人生は終わっている、一生賭けてこの罪を償うしかない──それしか考えられないので、

「自分は彼女にふさわしくない!」

 ──と思いながらも、ヒロインを救うために結婚(見せかけ、という体で)しちゃうわけです。

「ごめんよ、ごめんよ、こんな男と結婚させちゃって! ほんっとにごめん!(´;ω;`)」

 いくらヒロインが「そんなことないって!(゚Д゚)」と言っても、「デモデモダッテ」状態。
 ヒロインがキレ、がんばって「エロい奥さん作戦」決行。見事成功するも、新婚旅行が終わったら、

「病気治ったわけじゃないから、やっぱ離れて暮らした方がいいと思う……(´・ω・`)」

 と言いだしたり。
 いろいろ大変ですが、とりあえず彼には理解があって粘り強い妻と、献身的に支えてくれる従者兼友だちがいる、という方が、ロマンス的なハッピーエンドよりも「よかったなあ」と思いました。そこら辺、おまけしたい。
 蛇足ですが、アナ・キャンベルには、初夜に(リアルに)失敗するカップルが多い気がする(いや、まだ二作しかないけど(^^;))。
(★★★★)

最終更新日 : -0001-11-30

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