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●『淑女からの求婚』パトリシア・ワデル

●『淑女からの求婚』パトリシア・ワデル(ラズベリーブックス)
 1886年、英国。伯爵の孫娘クラリッサは、シェリダン伯爵サイモンに結婚を申し込んだ。祖父の死後一年二ヶ月以内に条件を満たした男性と結婚しないと、彼女は遺産相続の権利を失ってしまう。クラリッサには秘密があり、どうしても遺産が必要なのだ。そのためには必ず約束を守ってくれる信頼できる人と結婚しなければならない。もちろん、それだけでサイモンにプロポーズをしたわけではなかったが──。("The Lady's Proposal" by Patricia Waddell, 2001)



 今月の新刊です。
 ヒロインはヒーローに、

「祖父の遺産の3/4をあげるかわりに、私に残りの1/4を好きに使っていい権利をくれ」

 という約束を取り付け、目的を「慈善事業のため」と説明する。

「そういうことなら別にいいか。そろそろ俺も結婚しなくちゃだしー(゚Д゚)」

 と考えたヒーローは、結婚を承諾します。
 ヒロインの「慈善事業」とは、様々な事情からシングルマザーにならざるをえない状況にある女性を子供が生まれるまで保護して、社会復帰させる施設の運営なんだけど、これが上流階級ではスキャンダルの地雷になってしまう。
 今の時代だとよくわからないけど、「そういう不埒な女性を援助するということは、その人もそういう人」ということになるんだってさー ┐(´д`)┌ヤレヤレ
 それはヒロインも承知しているから、今までもずっと知られないようにやってきた。旦那が超保守的だとわかっているし、バレたら取り上げられる、とも思っている。でも、だんだん愛する彼に全部を打ち明けられないことがつらくなってくるし、便宜上の結婚だから愛してもらえていないと悲しくもなり──。
 一方ヒーローはといえば、保守的で傲慢な態度や尊大な物言いでとにかく偉そうな暴君なんだけど、実は人のために何かしようとか一切思ってこなかったお貴族のお坊ちゃん。ヒロインの献身的で思いやり深い性格に触れて、それを思い知る。そして、そんな妻の愛を独り占めしたいと思い、彼女の忠実な執事や施設に入っている妊婦たちにまで嫉妬したりする。狭小な自分を恥ずかしく思ったりとかね。
 そんなふうに、お坊ちゃんの思考がだんだん変わってくるところが面白かったです。ヒロインに指摘されて初めて、

「あれ、俺、なんか矛盾したこと考えてる?(゚∀。)」

 と思うとか、どんだけ思考停止してるんかと。
 でも、こういう人って今でも全然珍しくないよね……。「前時代的」とか言われるけど、そうでもないんじゃないか、と最近思う。人って、生きてきた年数よりも長い歴史が少なからず関わってくるんだよね。たかがその人が生きてきた三十数年であろうと変わるのは難しい。
 だからこそ、人が本当に変わっていく過程は面白いんだと思うんですが。
 こういう点ではとても読み応えがあったけど、萌えの点では少し不満がある……。ヒーローのお坊ちゃんぶりを、もっと前の方でわかりたかったなー。
 ……しかしそれは私の読解力の問題だろうか(´ω`;)。それとも、見抜けなかったことがくやしいだけ? 少しオマケするか……orz
(★★★★)
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theme : ブックレビュー
genre : 小説・文学

tag : ヒストリカル ラズベリーブックス ★★★★

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    プロフィール

    三原 白

    Author:三原 白
    本(主に海外ロマンス小説)の感想と、たまに映画の感想も書きます。ネタバレもありますので、ご注意ください。
    萌え重視であるため、心の狭い感想ばかりです。やや上から目線でもあります。
    評価は★★★★★が満点、★★★が標準点クリア。
    ★★★★からがおすすめです。
    くわしい注意書きは→コチラ
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