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2012 · 06 · 16 (Sat) 13:26

●『誘惑の旅の途中で』マデリン・ハンター

●『誘惑の旅の途中で』マデリン・ハンター(二見文庫)
 先進的な考えを持つフェイドラは、亡父の回顧録に記された母の死の謎を探るためナポリへ来ていたが、地元の警察幹部によって幽閉されてしまう。だが、そこに居合わせたイースターブルック侯爵の弟エリオットによって救出される。彼は、先代侯爵のスキャンダルの箇所を回顧録から削除させようとしたが、父との約束を守るため、フェイドラは拒否する。("Lessons Of Desire" by Madeline Hunter, 2007)
・〈ロスウェル〉シリーズ第2作

 最初はちょっと読みにくかったのですが、最終的にはなかなかの読み応え。
 読みにくかったのは、ヒロインの性格というか、囚われているものに対しての感情にイマイチ好感が持てなかったせいです。
 先進的で自由恋愛が主義であるヒロインは、いつも一人で行動し、何でも自分でやる。建前に縛られない言動をするし、自分一人で着られる服しか着ないから、当時としてはかなりの変人として認識されている。
 これに好感が持てなかったのではないですよ。気になったのは、これが彼女自身で考えたことではなく、ほぼ母への愛情と尊敬からの模倣というか──誤解覚悟でいうと、「洗脳」「虐待」に近いこと。自分ではなく、母が始めた自由な女性としての生き方しか知らないのに、他の人の生き方を諌めているところが、「痛い子」のように見えてしまって。
 こんな調子で痛い子のままだったらやだなあ(´・ω・`)、と思いながら読んでいたのですが、ヒーローとの関係が深まるにつれ、そして母親の死の真相がわかるにつれて、彼女の主義主張が揺らいでくる。
 このヒロインの心の揺れが実に丁寧に描かれています。「痛さ」として見えていたものが、次第に淋しさやあきらめや喪失感に置き換わり、強がりや頑なさを生んでいった背景が見えてくる。
 ヒーローも変わっていくというか、最初の方は腹黒い感じがしていたんだけど、途中から腹が立つほど誠実な人間になっていく。腹が立ったのは私だけでなく、ヒロインも同じだというのが素晴らしい。
 ヒーローはヒロインが言うような関係(愛人のような友だちのような)では満足できない。嫉妬深い(彼女に粉をかける男にはもれなく「殺すぞ(゚Д゚)ゴルァ!!」と脅す)し、別居なんて滅相もない。きれいなかっこうもさせたいし、贅沢もさせたい。
 とにかくヒーローはヒロインを甘やかしたいのです。もっともっと大切にしたい。
 でも、子供の頃から染みついた、

「男に頼ってはいけない。男は女のものをすべて奪うから」

 という主義に反する勇気が持てないヒロイン。ヒーローは、母を死に追いやった男のようにすべてを奪う人ではないかもしれない。でも……。
 結婚への踏ん切りがつかない彼女は、

「自分が結婚したのは、妥協したから」

 という言い訳を探します。ヒーローのささいな裏切りを、わずかなズルさを。
 でも、彼も彼女と同じくらい頑固なのですよ。妥協されて結婚なんてしたくないのです。その誠実さ故に、ヒロインを追いつめる。
 ヒロインの決心をギリギリまでひっぱるラストまで緊張感を堪能しました。ヒロインの性格などに好き嫌いあるかもですが、私はとても楽しめましたよー。
(★★★★)

最終更新日 : -0001-11-30

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