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2012 · 08 · 05 (Sun) 16:35

▽『シンデレラの罠』セバスチアン・ジャプリゾ

▽『シンデレラの罠』セバスチアン・ジャプリゾ(創元推理文庫)
 わたしの名前はミシェル・イゾラ。歳は二十歳。わたしが語るのは、殺人事件の物語です。わたしはその事件の探偵です。そして証人です。また被害者です。さらに犯人です。わたしは四人全部なのです。いったいわたしは何者でしょう?("Piege Pour Cendrillon" by Sebastien Japrisot, 1962)

 リン・グレアムの新刊(「シンデレラ」とつくと何となく)と見まごうようなタイトルですが、ベストセラーになったフレンチミステリーの新訳版です。
 冒頭の文はあらすじではなく、あとがきによれば原書に書かれている内容紹介(キャッチコピー)だそうです。これは旧訳版にもあったので、私もよく憶えている。ものすごくワクワクする文章で、これが有名だっただけに、私自身は当時読んだかどうだかよくわからなかったのですが──。
 結論から言うと、読んでいなかった(もし読んでいたとしても、これだけ何も思い出さなかったら読んでいないも同然)。
 それに、私が予想したラストとは違っていたし。
 書こうとしていたあらすじは、こんな感じでした。

 二十歳のミシェル(ミ)は、大金持ちの伯母を亡くしてまもなく、大火事で顔と両手を焼かれ、頭を打ったため記憶喪失になる。皮膚移植と整形手術で美しい顔を取り戻すが、記憶は戻らない。火事のあった屋敷にはミの幼なじみドムニカ(ド)も滞在していたが、彼女は亡くなっている。記憶をなくしたままのミは、詮索するような後見人ジャンヌから離れ、一人ホテルへ逃げこむ。その時、自分の書いた名前を見て愕然となる。

 彼女はドの名前を台帳に書き込んでいたのです。あまりに自然に書き込んだので、

「私は、もしかしてドなの?」

 と思うようになる。
 今の時代ではDNA鑑定がありますからこのトリックは成立しないし、顔と手を都合よく焼けないって場合もあるだろうに……。しかもその上に記憶喪失。往年のミステリの王道を全部乗せたような作品。
 何にせよ、それだけ伯母さんの遺産は莫大だったということです。こういう人間の欲だけはいつの世も変わらない。
 確かに古いけど、それをちゃんと踏まえて読めば、非常に面白い。フランスが舞台というだけでも雰囲気が違う気がするんだけど(単純>私(´ω`;))。パリやニースやフィレンツェといった華やかな土地が出てきて、登場人物は豊かな生活をしていても、心はカサカサに乾いている。
 そのくせ動機もお金だけではないし、誰もまともな感情を持ち合わせていないのかと思えば、意外な伏兵として出てきたり……。
 合理的な解決や衝撃的な動機というラストではなく、こういう結論が出しにくくてジワジワ来る物語の方が私は好きです。一人称と三人称や視点の混在は、意図的に使えば使うほど、そしてうまければうまいほど燃える(萌える、ではなく(^^;))。ミステリーに限らずね。
 でも、私が考えたラストになるとばかり思ったのですが……それなら、あの最初の章は何なんだ。幼い頃の衝撃的な出来事って、アレじゃないのか?
 そこも何か仕掛けがあるのかな、ついつい考えてしまいます。けど、はっきり書いてないし、何にも関係ないのかね……(´・ω・`)。
(★★★★)

最終更新日 : 2016-01-21

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